僕の家には3年ほど開けた事のない開かずの部屋がある引っ越しのために開けなければならない最後のひと部屋はそこと相成ったウォークインのクローゼットなのだけれど中には僕の振り返りたくもない過去が沢山に詰まっているそれも手前から現在に近いところからはじまって正面が最も過去といった具合に時系列ときている恥ずかしすぎるなんでこんなことになったのだろう開けたら消えて無くなっていてほしいものだけれどもそんな魔法は持ちあわせていないので困った覚えているだけでも写真家をやっていた時の膨大な謎の日本語ですらない女だらけの資料やら宇宙船のような建築物の本やら今みたら腕の足りていないであろう写真が積み上げられているだろうし当時は興味があったのだろうけれどロクでもないものが列をなして待っているだろうし何かの神様もいた気がする格好だけは整っている写真も張りだした記憶があるどうだといった具合だろう恥ずかしすぎる渡せずに終わった手紙やらもらった手紙なんかもある事だろうおおい隠すようにしてきた僕のブラックボックスここがあったから目にもいれず安寧に過ごせたに違いないお世話になった空間でもあるということか当時の僕にはそんな外部に委託する空間が必要だったのだとおもうエロ本が詰まっていた方がまだましだ僕の恥ずかしい部分の塊がそこに集約されている部屋から今の僕ができていることにもなる訳なので直視できないけれど覗きみたい危なげな興味もあるもしもエロ本で埋まっているとしたら僕はどこかの犯罪者となっていそうなのでそれはそれで困るのかもしれないこれを全て捨てることができたからといって僕の過去が消えてなくなる訳ではないのだろうけれど無くても困らない大切なものがそこにあるのかもしれないし置いていくなんて恥ずかしいことはできないケリをつけるまでほうっておいた僕が悪いのかはたまた流れなのかなんにせよ明日が待ち遠しいとはならないし稚拙な僕を受け入れてやる儀式みたいなものと諦めてクローゼットの中を始末するまでは死ねないと意気込んでは萎えた