直角に曲がらないと気がすまない人がいたパン屋さんの駐車場で焼きたてのパンを食べていたら交差点のところで立ってにやにやしたおじさんがなんでだろうなーなんで直角に曲がらないんだよと交差点を曲がる車にこうだよこうと指先をめいいっぱい車に伸ばして空気を横に大きく切ってそれから縦に直角のサインを出していた曲がった車を見送っては次の車にめがけて繰り返しているようだった僕は面白いおじさんだなとしばらく観察していたそのうちにおじさんが直角に曲がらない車たちに呆れたのか飛び跳ねながら何でなんでと大笑いしはじめた直角に曲がらないと何で気がすまないのか想像してみたけれど怒るなら過去のトラウマからでもありそうだと思えもするのに笑っているあたりがちぐはぐで分からないどこからくる感情なのか気になりすぎて3個目のパンに手をつけて見守っていると反対側から横断歩道をコロコロしながら渡って来た人がいた道路の幅を測る業者の人のようでコロコロ回る車輪に棒のついた距離を計測する機械で横断歩道を計測しているようだったお仕事中の人にも直角おじさんは容赦はしないコロコロ機械に向かっておじさんは直角の指示を出した何度も何度も出したおじさんの指先がぶんぶんと空を切る業者さんは少し立ち止まって困った顔をしてからおじさんの前で90度まさに直角にキリッとこれでいいのかいといった具合に曲がって行った直角おじさんはふんふんと満足したようで直角の指示をやめてしまって足元にあった鞄を手に取り交差点を渡って行った行き先の歩道は細くなだらかなカーブだったけれどこまめにとても器用に直角に曲がって行ったので流石ですね直角おじさんとなって僕は満足して車を走らせた(直角には走ってあげない)